活動方針


大阪平和人権センター2022年度活動方針
 
はじめに

 新型コロナウイルス感染症は、日本社会での感染確認から2年を経過しましたが、その猛威は留まることを知りません。政府は、1月7日には沖縄、山口、広島の3県にまん延防止等重点措置を適用することを決定、1月21日からは東京など首都圏の1都3県、愛知、岐阜、三重の東海3県など多くの都道府県で同措置が適用されることとなりました。長期にわたるパンデミックは、社会的弱者を直撃し生活破綻の広がりが懸念されていますが、新自由主義的政策を実行してきた政府・自公政権は有効な手立てを見いだせずにいます。繰り返される「まん延防止」などは、結局のところ市民任せの一時的措置であり、ワクチンの早期接種、病床の確保、発症時の行政対応、新薬の開発など、コロナ感染症発生から2年を経過してもなお不完全な対応に終始しています。変化しつつある社会構造に対応できる政治が求められます。
 大阪平和人権センターの取り組みも、当面、対面での取り組みは制約をされることとなります。SNSやホームページに情報発信やネットの活用など、創意工夫を持った取り組みを継続していかねばなりません。と同時に、コロナ後の取り組みを後退させるわけにはいきません。
 昨秋の総選挙では、立憲民主党の後退と日本維新の会の伸張を許し、改憲勢力は3分の2を大きく超えることとなりました。平和フォーラムは、総選挙結果について「問題の本質は、立憲野党や私たちの政策の全体像が、今の政治に様々な疑問を感じている人々の理解や共感を十分に得られなかったところにあります。」とした上で、「私たちの運動も、投票に行かない5割の人たちに、どれだけ訴えかけるような努力ができているだろうか、仲間内の運動で自己満足に終わっていないだろうか、今回の選挙結果はこのような課題を私たちにもつきつけています。」と総括しています。この観点は維新の会が小選挙区すべてで議席を占め、立憲民主党は大阪16区で比例当選した以外、議席を失った大阪において、特に重要です。
岸田首相は年頭の所感で憲法改正について「本年の大きなテーマ」と述べており、「敵基地攻撃能力」保有や、「緊急事態条項」導入などの危険な議論も進めています。今夏の参議院議員選挙が終われば、その後3年間は国政選挙が行われない可能性もあり、参議院選挙で改憲勢力が3分の2以上を占める事態となれば、憲法改正も含めた大幅な政策転換につながりかねません。この意味で、今回の参議院議員選挙は極めて重要です。
 2022年2月24日、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を開始しました。欧米諸国は、一斉に反発し経済制裁措置に入りましたが、ロシア軍は、プーチン大統領が独立を承認したドネツク・ルガンスク両人民共和国に留まらず、首都キエフを含むウクライナ全土を攻撃しています。攻撃対象は学校や病院にまで及び、侵攻後1週間で民間人の犠牲者は死者2000人を超え、ポーランドやスロバキア、ルーマニアへの避難民は100万人を超えています。3月4日には、欧州最大級のザポリージャ原発でも戦闘があり、原発サイト内において火災が発生し、あわやという事態も起きています。
 大阪平和人権センターは戦争をさせない1000人委員会大阪とともに総がかり行動実行委員会に結集し、3月9日に中之島公園での緊急集会と市民パレードに取り組みました。これに約800人の参加がありました。
ウクライナ情勢を利用し、安倍晋三元首相や高市早苗自民党政調会長、日本維新の会などは、核武装なしに日本は守れないとして米国と核を共有する「核シェアリング」を実施し、非核三原則を見直すべきと主張しています。原水禁は、抗議声明を発出し、このような議論は憲法9条に違反し、世界を核の危機に陥れるもので、唯一の戦争被爆国の市民として決して許されるものではないとの見解を表明しています。
このような極めて危険な状況のなかで、安保法制の違憲部分の廃止と「立憲主義」を回復、「憲法改悪」を阻止するための多数派形成が改めて求められています。引き続き、立憲主義・民主主義を立て直す取り組みを進めていきましょう。

1.あらゆる戦争政策に反対し、「憲法9条」を軸とする平和国家を実現する取り組み
 自民党は2月1日、憲法改正推進本部から改組した憲法改正実現本部の国民運動委員会を開き、国会での憲法論議の推進を目的に、全国11ブロックの責任者らを集め5月の連休までに全都道府県で地方議員を対象にした集会を開催することを確認するなど、党内の改憲議論を加速させています。また、ブロック会議を足掛かりに自民党4項目の改憲素案の有識者への理解の拡大に加え、国民にむけての「改憲の草の根運動強化」を目論んでいることが明らかなことから、そうした動向にも注視しなければなりません。
通常国会初となる憲法審査会が2月10日に開催されました。憲法審査会の開催日程については、与野党第一党同士の協議により決めるのが通例でしたが、野党内の足並みの乱れが顕著に表面化しており、憲法審査会をめぐる状況は、今後も予断を許しません。立憲民主党を中心とする立憲野党にとっては、まさに今通常国会は正念場といえます。 
この間の「国民投票法(改憲手続法)」改正の議論を踏まえれば、私たちはまず、国民投票法の附則4条に定められた事項が解決されない限り、「憲法改正国民投票」は許されないとの認識を社会的に浸透させる取り組みが必要です。附則4条に関わって、特にインターネットを含めた広告放送(CM)の制限や国民投票運動の資金規制のあり方は、大阪市廃止・分割の是非を問う住民投票の経験から、重要な課題です。
一方で、平和フォーラムは先に触れた総選挙の総括にかかわって「衆議院では圧倒的に改憲勢力が多数であり、国会での憲法発議を阻止することは困難な状況になりつつあります。したがって、今後の私たちの運動は「憲法改正国民投票」が行われる事態も想定したものとして、組み立てていく必要があることを踏まえておかねばなりません。その時には、今回の衆議院選挙で投票に行かなかった5割の人たちに、どのように訴え、共感を得ていけるかがカギとなってきます。」との見解を示しています。
 改憲発議阻止にあたっては、反対派にも、賛成派にも、そして組織されていない大多数の市民に、改憲の危険性について知ってもらうことが重要です。そうした意味においても、これまで憲法に関心を持っていなかった人びとに対して訴えかけるツールとしてウェブサイトやSNS、動画配信などを活用した情報発信能力の強化をめざすとともに、これらを活用して、より一層改憲反対の世論醸成にとりくんでいきます。
 以上の観点から、大阪平和人権センターでは、「おおさか総がかり行動」の取り組みを継続し、「9条改憲」を許さない取り組みをすすめます。
①当面は、「国会による9条改憲の発議」をさせないことを目標として取り組みます。
②「9条改憲」を最終的に断念させるため、「日本国憲法のめざす世界像」を国民共有のものとすることをめざして取り組みます。
③第59回護憲大会の成功に協力します。
④「9条改憲」を許さない取り組みでは、引き続き「おおさか総がかり行動」の形で、5月3日の憲法記念日と11月3日の文化の日(憲法発布の日)を重点に取り組みます。

2.在日米軍と自衛隊の再編強化に反対し、緊張緩和と軍備縮小をめざす取り組み

 米国の東アジアにおける安全保障戦略は、2021年1月に民主党のバイデン政権が発足以降も、基本的に前トランプ政権を継承しています。一帯一路政策で経済規模を拡大する中国に対抗して、米国はクアッド(Quad)を結成し、さらに英国、豪の2か国と軍事同盟といえるオーカス(AUKUS)を発足させ、中国への軍事的圧力を強化しています。台湾有事や朝鮮の核開発再開が言及され、米国とその同盟国による軍事演習が頻繁に行われている現状は、東アジアにおける軍事的緊張を高める結果となります。
そうした中2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領がウクライナへの軍事侵略に踏み切りました。侵略の口実には、プーチン大統領が再三指摘していたように、軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の拡大があります。軍事同盟や武力による威嚇で平和的な社会を築くことはできません。この戦争を機に日本社会で巻き起こりつつある軍備増強、核の共有に向けた議論に対抗していかねばなりません。
 2021年11月に発足した岸田政権は、「敵基地攻撃能力」を検討すると明言しています。そもそも「敵基地攻撃論」については、憲法9条の平和主義の下で先制攻撃は憲法に反するとの政府の統一見解が確定していました。そして、日本の防衛政策の基本方針として「専守防衛」が本旨とされるに至ったものです。しかし安倍政権下で、閣議決定によるこれまで違憲としてきた集団的自衛権の行使容認と、そのことを基本とした安保法制が成立したことにより、この「専守防衛」のあり方は全く形骸化してしまいました。また、護衛艦「いずも」と「かが」の空母化、航続距離の長い航空機、空中給油機、強襲揚陸機能を持つ艦船の保有など「専守防衛」とはいいがたい装備を導入してきています。
岸田政権は、「防衛力強化加速パッケージ」と称し、2022年度予算を2021年度補正予算と一体として編成し、軍事力の強化にまい進しています。その結果2022年度の防衛予算は、10年連続増大、過去最大の5兆4005億円を計上しました。米国は同盟国にGDP2%の防衛費を要求しており、自民党も昨年の選挙政策においてもGDP2%をめざすことを明記しています。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると2020年の日本の防衛費は世界9位でした。仮に軍事費をGDP比2%に増額すれば、日本は米国、中国に次ぐ世界3位の軍事大国となります。危険な状況です。
私たちは、日米両政府によって推し進められる「軍備拡張」の道ではなく、武力不保持をめざした「憲法9条」の理想に近づくべく、近隣諸国との緊張緩和と軍備縮小を求めます。そのため、大阪平和人権センターは、平和フォーラムに結集し、以下の取り組みを進めます。
①日米安保条約を利用した「憲法9条」の骨抜き、「安保法制」による「専守防衛」からの逸脱に反対します
②オスプレイや戦闘機・空母艦載機などの沖縄・佐賀・岩国・横田などへの配備と全国での低空飛行訓練拡大に反対し、沖縄辺野古新基地建設工事強行と普天間基地の固定化反対、南西諸島の基地建設に反対する闘いに引き続き取り組みます。
③米軍への特権的な処遇を容認している日米地位協定の見直しをはかるように求めます。
④日米合同軍事演習と滋賀県あいば野へのPAC3配備、京丹後市のXバンドレーダー基地に反対します。
⑤大阪港の軍事利用に反対します。米軍艦の大阪港入港に反対します。
⑥コロナ感染症対策など現地の状況に留意しつつ、今後も沖縄平和行進の成功に協力します。

3.核と戦争のない社会をめざし、東アジアの非核・平和確立に向けた取り組み
日本はこの間、核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自称しながら、一貫して核兵器禁止条約への不参加の態度を変えることがありませんでした。しかしすでに核兵器禁止条約が発効し締結国会議も予定される今、少なくともオブザーバー参加へと早急に方針転換することが必須です。そして、条約への署名・批准へ向けて、核兵器廃絶の議論に参加すべきです。
米国バイデン大統領は、トランプ前政権の「単独主義」を改め、「同盟重視」の姿勢で東アジア外交に臨むとし、2021年4月16日の日米首脳会談では、米中の対立を反映し、日米同盟の強化と「自由で開かれたインド太平洋」の実現への日米連携・結束を約束しました。日本政府は、「同盟および地域の安全保障を一層強化するための自らの能力を強化することを決意した」として、専守防衛の枠を超えて安全保障上の活動を強める意図を明確にしました。中距離核をめぐる米中露3か国間の現状を反映し、米国の第一列島線(マリアナ諸島から琉球列島)への中距離ミサイル配備が現実化しています。一方、一帯一路政策に基づく中国の西進路線は、欧州各国の懸念も呼び込み、英国の核戦力強化の宣言や東アジアへの空母派遣、宮崎県えびの高原での日米合同演習へのフランス陸軍の参加など、新たな動きが生まれています。52年ぶりとも言われる台湾問題への日米共同宣言での言及、3月13日の日米豪印の4カ国首脳による宣言に明記された「ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対応すべく海洋安全保障を含む協力の促進」など、経済発展を続ける中国を意識した状況は、東アジアの緊張を高めています。
 朝鮮半島の非核化が日本国民の安全にとって極めて重要な課題であることは変わりません。バイデン政権下においてこれまで米朝会談の進展はありません。北朝鮮は3月24日大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を発射しました。ミサイルは1時間10分以上飛行後、日本の排他的経済水域内に落下したとされています。北朝鮮は2018年4月に核実験場の廃棄とともに、核実験とICBM発射のモラトリアム(一時停止)を宣言しましたが、約4年で宣言は覆されたことになります。まずミサイル発射を止め、核実験とICBM発射のモラトリアムに北朝鮮が立ち返るよう求めていかなければなりません。また、朝鮮半島の課題に対して当事国政府が、何らかの積極的提案と対話を生み出すことを、強く求めていく必要があります。20年から朝鮮半島平和宣言の署名活動が行われています。大阪平和人権センターもこれに協力しています。また、平和フォーラムは「米国は米韓合同軍事演習を止め、朝鮮との対話の途を開け」と米国大使館に申し入れた上で、領事館前での行動に取り組むよう指示をしています。大阪平和人権センターとしてこれにも取り組んでいます。
日韓関係も問題解決に向かっているとはいえません。2021年4月27日、菅内閣は、日本維新の会の馬場伸幸幹事長の「『従軍慰安婦』という用語は、軍により強制連行されたかのようなイメージがある」「『従軍慰安婦』の文言は不適切だ」とする質問趣意書に対して、今後政府として「従軍慰安婦」や「いわゆる従軍慰安婦」との文言は使用せず単に「慰安婦」とするとの答弁書を決定しました。同時に朝鮮人労働者の半島からの移入に関して、「強制連行」や「連行」は使用せず「徴用」とするとも決定しました。そもそも、徴用とは権力が強制的に労働につかせることを意味し、強制連行と何ら変わることはありません。日本社会が、歴史事実を認め向き合うことが求められています。
戦前に強制連行による朝鮮人労働者が過酷な労働を強いられたとして、韓国政府が反発していた佐渡金山の世界遺産推薦を、2022年2月1日、日本政府が決定しました。韓国政府は2月4日に、日本政府の試みを阻止するための官民合同タスクフォース(TF)第1回会議を開いています。世界遺産が何も「負の歴史」を否定するものではありません。要は、其の歴史をどのように伝えるかにあります。明治日本の産業遺産において、軍艦島などでの強制労働の事実を全く扱わない日本が、韓国から非難されるのは当然です。大阪平和人権センターは、ユネスコ・イコモスの勧告に従って、正しい歴史を記載するように求めます。
 「韓国併合」というおぞましい歴史は、決して政府間の「合意」によって「なかったことにできる」ものではありません。両国の国民の間で、友好関係、相互に尊重しあえる関係を築くために何が必要かを問い返しながら、信頼と協力の関係を築いていく努力が必要です。韓国の新大統領にもそのような姿勢が求められます。
 大阪平和人権センターは、平和フォ-ラム・原水禁に結集して、核兵器廃絶と北東アジアの平和のために、以下の取り組みを進めます。
①「被爆77周年原水禁世界大会」(福島大会、8月4~6日広島大会、8月7~9日長崎大会)の成功のため協力します。
②大阪での「非核・平和行進」に代わる取り組みについて府内各地域平和人権連帯会議と協力して取り組みを行います。
③ヒロシマ・ナガサキの被爆者の残された課題解決への取り組み、原爆症認定問題や被爆体験者協・二世団体連絡協の署名・裁判支援活動などに協力します。
④「朝鮮半島の非核化」を中心とする北東アジア非核地帯構想を支持し、その実現をめざして取り組みます。
⑤日朝国交正常化をめざし「日朝国交正常化全国連絡会」を軸とした取り組みに協力します。
⑥大阪高校生平和大使派遣委員会をサポートします。

4.脱原発社会の実現と気候変動危機への取り組み

 ロシアのウクライナ侵攻で、史上初めて稼働中の原発が武力攻撃に遭いました。原発が武力攻撃されるとは、もともと想定されていません。平和時においても事故による環境破壊が懸念される原発は、戦時には当事国に留まらない世界的な環境破壊と生命の危機を誘発するものです。原発立地地帯での初めての戦争に、私たちは脱原発がいかに重要かを再認識しました。
福島第一原発では、依然として事故の収束作業は難航しています。廃炉にむけて最も難関といわれる溶融核燃料(デブリ)の取り出し作業は極端に高い放射線に阻まれ、取り出し技術の確立の目処も立っていません。トリチウム処理水(汚染水)の問題は喫緊の課題です。政府は関係閣僚会議で海洋放出を決定し、来春には放出しようとしています。国・東電は、放出に際して丁寧に説明するとしていますが、漁協や生産団体、県民の強い反対の姿勢は変わっていません。
福島原発事故以降、これまで再稼働をした原発は10基(九州電力川内原発1号機、2号機、玄海3号機、4号機、関西電力大飯原発3号機、4号機の大飯原発3号機、4号機、美浜原発3号機、四国電力伊方原発3号機)となっています。関西電力美浜原発3号機は、運転開始から44年を数える老朽原発です。さらに関西電力高浜原発1号(46年)、2号機(45年)がすでに新規制基準適合しており、それに続こうとしています。老朽原発は、事故の危険性や労働者の被曝の増大など様々な問題を抱えています。すべての原発の再稼働に反対します。特に老朽原発については40年ルールからも廃炉を求めることが必要です。
日本原燃の六ヶ所再処理工場(青森県)は、原子力規制委員会による新規制基準に適合しているとして審査に「合格」しましたが、2022年上期としていた完工時期は、再処理工場の稼働に必要な設備の設計をまとめた工事計画の審査を巡り、原子力規制委員会の審査が進んでいません。審査資料の不備で原子力規制委員会からたびたび再検討を求められており、26回目となる完工延期は避けられない状況にあります。本格稼働時期は全くめどが立ちません。
 また、高速増殖炉(もんじゅ)計画は破綻し、高速炉計画にも展望はありません。核燃料サイクル計画からの撤退は喫緊の課題です。
 また、温室効果ガスの排出がもたらした気候変動は、もはや「気候危機」というべき状況です。「パリ協定」で合意された目標の達成に不十分な取り組みしか行おうとしない日本政府に対し、環境NGOや市民がさまざまなキャンペーンを行い、削減目標の引き上げを訴えています。EU欧州委員会は2月2日、原発及び天然ガスを気候変動対策に寄与するものとして投資を促進する「EUタクソノミー」に盛り込む方針を発表しました。このような原子力回帰をめぐる国際的動向を奇貨として、日本国内においても原発をクリーンなエネルギーとして再度拡大しようとする宣伝が行われています。私たちは脱炭素だけではなく脱原発を同時に推進することを以てのみ持続可能で公平な社会がつくられるのだということを基本において、原子力回帰を目論む反動的な動きに対抗し、運動を展開しなくてはなりません。大阪平和人権センターにおいても加盟団体の共通認識を深めるための学習が必要です。
① 老朽原発の再稼働をはじめあらゆる原発の再稼動に反対します。
②「高速炉開発」と核燃料サイクル計画の継続に反対し、六ケ所村処理工場の廃炉を求めます。
③平和フォーラム・原水禁の「さようなら原発アクション」に参加するともに、福島事故の課題や脱原発についての様々な学習活動に取り組みます。
④豪雨・洪水と干ばつが頻発する「気候変動危機」について学習します。

5.差別と排外主義に反対し、多様性が尊重される社会的連帯をめざして
 
 2021年9月27日、「全国部落調査」復刻版出版差し止め裁判の判決が東京地裁で言い渡されました。判決は、被差別部落の一覧表の公表が部落差別を助長することを認め、出版の差し止めに加えインターネット上でのデータ配布禁止や二次利用の禁止も認め、原告らの大部分に対して賠償を認めたことなど、基本的に評価できる内容でした。しかし、「差別されない権利」の侵害を否定したこと、差止めの範囲につき、「復刻版 全国部落調査」の全ての記載に対する差し止めを認めず、一部の都道府県につき差し止めの効力を及ぼさなかったなどの点は、極めて問題であり、引き続きYoutubeなどに対して違反報告をするとともに、法務局などに対して削除要請などを強化し、アウティング(暴露)と差別は社会悪であるという世論を高めるとともに、人権侵害救済法と差別禁止法の早期制定にむけた取り組みが求められています。
 また、在日コリアンであることを理由に差別記事をネットに投稿されたとして、元中学生が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が21年5月12日、東京高裁でありました。同高裁は一審に続き「人種差別に当たり、人格権の違法な侵害」と認め、慰謝料など130万円の支払いを命じました。
一方、京都府宇治市のウトロ地区で空き家や倉庫などが燃えた火災で2022年オープン予定の「ウトロ平和祈念館」に収蔵するため保存されていた貴重な史料が消失しました。これに関して22歳の男が放火の疑いで逮捕されています。この男性は名古屋市でも在日本大韓民国民団本部に火を付けたとして、21年11月に器物損壊の罪で起訴されています。正にヘイトクライムです。
 「障害者差別解消法」・「ヘイトスピーチ解消法」・「部落差別解消推進法」が制定され、差別を「あってはならない」ものとされていますが、「あってはならない」差別が現実には「ある」ことを見据え、差別をなくす運動をすすめる必要があります。
 日本国内では労働力が不足し、多くの産業において外国人労働者に頼らざるを得ない状況がありますが、外国人労働者への人権無視、低賃金や不当な搾取、劣悪な労働環境など様々な問題が生じています。また定住し長く日本に暮らす外国人に対しても教育、医療、福祉など基本的な行政サービスも不十分なままです。世界的に見ても突出して低い難民認定や、昨年、収容中にスリランカ人女性が亡くなったことによって関心が高まった出入国在留管理官署の収容施設(入管)の問題も、外国人全般に対する排他的、差別的な政策が背景にあるといえます。
 大阪平和人権センターでは当面、以下の取り組みを進めます。

①差別解消三法を活用し、インターネット上の悪質な差別実態を直視し、部落差別をはじめ、あらゆる差別の撤廃と人権侵害の救済に役立つ、人権侵害救済法と差別禁止法の早期制定を求めます。
②排外主義的な教科書の採択に反対し、採択地区の小規模化、地域や学校現場の声を反映した 学校単位での教科書採択を求めます。
③朝鮮高校の授業料無償化を求める裁判への支援と大阪府・市の朝鮮学校への補助金の全面復 活を求める取り組みに引き続き協力します。
④定住外国人の権利確立、在日外国人の教諭採用を求め、実効ある人権救済法の制定と国際人 権諸条約・選択議定書の批准促進に向けた取り組みに協力します。
⑤障害者権利条約の完全実施を求める取り組みに協力するとともに、障害者雇用を促進するた めの「合理的配慮」を確立する取り組みに協力します。
⑥狭山差別裁判の第3次再審の実現など冤罪をなくす取り組みに協力します。
⑦「選択的夫婦別姓」、クオータ制実現、「同一労働同一賃金」の実現など女性の人権を国際的水準に引き上げ、日本のジェンダー平等を実現する取り組みに協力します。
⑧「男女共同参画第5次基本計画」の実効化と女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求める取り組みに協力します。
⑨LGBTQなどの性的少数者が排除されない社会をめざす取り組みに協力します。
⑩大阪府・市などの職員・教職員の管理を進める「条例」の撤廃を求め、「愛国心」・「日の丸・君が代」の強制、「競争・成果主義」による人権侵害に反対します。
⑪先の大戦への反省と残された戦後課題や多文化・多民族共生社会の実現に向けた施策の充実を求める取り組みに協力します。
⑫全日建関西地区生コン支部への権力弾圧に反対し、憲法28条が保障している労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権の労働三権を守らせる活動に取り組みます。
⑬SDGsについては、平和・人権・民主主義の深化において、それをどのように活かすことが可能か、学習・研究を深めます。

 6.組織・活動の活性化に向けて

 大阪平和人権センターは、求められる課題に比べて十分な力を発揮できているわけではありません。今後、より一層組織力量を高め、運動の前進をはからねばなりません。そのためには、より多くの人々の協力を必要とします。私たちの取り組みの有効性を含め、見直すべきは見直しながら、運動の前進をはかっていくこととします。
①加盟団体の情勢・課題認識の共有化、意思統一をはかるとともに、平和・人権・民主主義の深化をめざす様々な団体・個人との連携協力のあり方を追求します。
②府内7地域の平和人権組織と連携します。
③平和フォーラム・原水禁や、平和フォーラム関西ブロックとの連携をはかります。
④各種学習会・講演会の開催にあたっては、参加者にとって有意義なものになるよう工夫します。
⑤「戦争をさせない1000人委員会・大阪」との連携をさらに密にして取り組みをすすめます。「しないさせない戦争協力関西ネットワーク」など共通の目標をもつ市民団体との連携・協力をはかります。
⑦集会などの参加要請については、加盟団体が持続的に取り組める態勢づくりをはかります。年間の「事業計画」を明らかにし、十分な準備が行えるようめざして取り組みます。
⑧発文書・情報発信体制の充実に努めます。発文書にかかわっては、電子メールでの参考配信を地域人権組織に行います。
⑨財政確立に努め、組織の拡大に努力します。特に2022年度からの数年間については、予算の見直しを図り、持続可能で特別会計に頼らない財政確立をめざします。